ときめく箱

チケットを頂いて、尾張徳川家の至宝を見ることができる徳川美術館に行ってきました。
現在やっている企画展は「ときめく箱」。その名の通り、お宝が入っていた「箱」を展示した展覧会です。ちょっとマニアックすぎるような感じもしますがそうでもありません。
新たにお宝を入手したときには、新たな箱を作ってそれまで入っていた箱ごとそれに入れ、入手した経緯などを「箱書き」するということがおこなわれます。よって、そのお宝が所有者を何度も変えてきたような重要なものであればあるほど、その歴史が地層のように重なりあう幾重もの箱となるのです。
というわけで、骨董品はそれを収納している「箱」自体もなかなかに重要なものではあるのですが、中身だけが展示されることが殆んどなので、滅多に見ることはありません。徳川美術館はコレクションをテーマごとに順繰りに見せてゆくタイプの企画展が多いのですが、「箱見せりゃいいじゃん」と考えついた人はなかなかのアイディアマンだと思います。
最近は大学で木工を教えたりもしているので、昔の箱はどうなっているのか?という興味もあって行きました。
ところで、建築に「けんどん」という扉の納まりがあります。蝶番も取手もなく、板を上下にスライドさせて溝にはめ込む型式、といえば分かる方も多いんじゃないでしょうか。使用頻度が少なく開閉は多少面倒でも構わないが、金物などを表面に出したくない時に採用することが多いです。これは板の大きささえちゃんとしていれば、機構としては単純なものなので、安手の箱のフタにも使われます。
そんな「けんどん」なんですが、漢字で「慳貪」と書くことを知りました。あまりいい意味ではなさそうだね、仏教用語かね、なんて友人と話していたんですが、意味を調べるとやはり悪い意味で、「ケチで欲深い事」なんだそうです。その語源は諸説あるみたいなんですが、江戸時代の割り切ったサービスの蕎麦屋が「けんどん屋」と呼ばれていて、そこで使われていた麺の収納箱が「けんどん」だったようです。
今でいえば、マクドナルドの紙箱の構造がいつの間にか建築の世界に取り入れられ、「この扉、マックで納めといて」なんて言われているようなものでしょうか(良いたとえが思いつかなかった)。


